設計士ブログ
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更新がかなり遅れてしまい申し訳ありません・・・
前回ブログの続きです。
今回は遮熱シートが建物の熱環境にどのような影響を与えるのか?を数値的に考えてみようと思います。
前回解説した熱移動の3原則「伝導」「放射(輻射)」「対流」のうち、
遮熱シートが防いでくれるのが「放射(輻射)」になります。見えない電磁波(熱)を遮るのが遮熱シートの役割です。
通常、遮熱シートは壁の中に施工します。
室内側からビニルクロス〜石膏ボード〜断熱材〜構造用面材ときて、その外側(外気側)に施工します。
上記は一般的な木造住宅の壁の断面図です。
黄色いところが断熱材。
この図では左側が室内、右側が室外(外気側)になります。
日射熱が一番外側の外壁に当たります。
夏場には直射日光によって外壁が黒い(濃い色)外壁ですと実測では表面温度が55℃~60℃くらいになってしまいます。
55℃~60℃の熱を持った外壁は、外壁内側の通気層内と外側の屋外(大気中)に向かって熱を放射します。
通気層内から、室内側に熱が入るその手前に遮熱シートを施工します。(上記図面 参照)
遮熱シートが防いでくれるのは55℃~60℃に温まった外壁材が出す放射熱だけです。
その放射熱がどのくらい出るか?が分かれば、遮熱シートの効果がほぼわかる、ということになります。
断熱性能を計算するときに使う数字に、熱貫流率(U値)というものがあります。
通気層の熱貫流率は9.1w/m2・K(熱伝達抵抗は逆数になるので0.11 ㎡・K/W)になります。
このうち、伝導、放射、対流の割合がどれくらいになるか?
が難しいのですが、
通気層内の熱の伝わり方は、建築研究所「外皮の熱損失の計算方法」によると
放射50%程度・対流50%程度
よって放射によって伝わる熱は約4.6w/m2・K(9.1w/m2・Kの約半分)
その放射熱を全てをカットできるとしたら(あり得ないですが…)
放射熱伝達率4.6w/m2・k
対流熱伝達率4.5w/m2・k
遮熱シートの効果で放射分は全てカット出来る前提なので4.6w/m2・kが消えて対流成分4.4w/m2・kだけが残ります。
4.4w/m2・kの逆数が0.23㎡・K/W(熱伝達抵抗)
すなわち対流のみの熱伝達抵抗が0.23㎡・K/W。
もともとの通気層の熱伝達抵抗0.11 ㎡・K/Wを引くと、その差は0.12㎡・K/W。
この0.12㎡・K/Wが遮熱シートによって放射熱を完全に遮ったと仮定した場合の通気層の熱伝達抵抗になります。
熱伝達抵抗0.12㎡・K/Wという数字を見ても、僕もピンこないので
高性能グラスウール(熱伝導率0.038w/mk)に換算すると厚4mm程度の効果です。(1/0.12=8.3∴0.038/8.3=0.0047m)
遮熱シートが熱を防ぐ効果は、たった4mmの高性能グラスウールほどしかありません。
薄すすぎ!!
どう考えても、その遮熱シートの効果を電気代等で回収するには永遠に無理そうです・・・
しかし遮熱シートの良い点もあるはず!
なので色々調べてみてわかった事は、断熱性能が低ければ低い程遮熱シートの効果が大きくなる!
と言う事です。(断熱材が薄ければ薄い程、遮熱シートの遮熱(断熱)効果に依存する)
断熱性能が極めて低い状態にある場合は遮熱シートの効果は感じやすくなる。
なので断熱性能が低い住宅にお住まいの方は遮熱塗料などで塗り替えをすれば
遮熱効果を感じると思われます。